子供さんが遠方に住んでいたり、ご夫婦のご自宅を誰も使う予定がない場合に遺言を検討すべきであると考えます。
子供さんが数名いた場合、実家だから残したい、各自の家計のため売却したい、など意見が異なることがあります。
こうなると、遺産分割協議が整わない可能性があるので、前述のとおりの遺言が相続人間の紛争を回避するに功を奏することがあります。
実は、この遺言は、その実現にかなりの専門知識を要するので、必ず実現できる専門家に相談して下さい。
遺言は作ることがメインではなく、遺言者が亡くなった後に実現できることが目的ですから・・・。
今回の事例は、「相続人間で調整することが困難な場合」の遺言作成事例の典型といえるでしょう。
ご長男の奥さんは、なかなか出来た方で、その方を自分の父親のように思い、その方が亡くなるまで療養看護に努められました。
その方には、ご長男とご二男があり、ご二男は独身で、悪いことに重度の総合失調症で、長期の入院をされていました。
ただ、ご二男は障害年金を受給されており、医療費等は、この年金からまなかわれていました。
その方は、自筆証書で遺言を作成していました。
事情を話して、知り合いの弁護士の先生に点検をしてもらったそうです。
その封印をした自筆証書遺言をご長男夫婦が私の事務所に持参してきました。
本来であれば、点検をして頂いた弁護士の先生に相談すべき案件でしたが、不幸にして、その弁護士の先生は亡くなったとのことでした。
早速、その自筆証書を家庭裁判所で検認をすることにしました。
その内容はといいますと、不動産をご長男、預金等は、ご長男とご二男、ご長男の奥さんで各々3分の1づつ取得させる、というものでした。
また、遺言の最後に、ご長男夫婦にご二男のことを宜しく頼む、と綴られていました。
その方は、遺言によって、ご長男の奥さんに今までのお礼とご二男の今後を託したのでした。
遺言がなければ、相続人ではないご長男の奥さんには、お礼をすることができなかったに違いありません。
「相続人以外に財産を譲りたい場合」の定型的な例であったと思います。
その後、ご長男の奥さんは、今もご二男の療養看護のため、週2回病院に通っておられます。
ただ、実際にあった事例を書いている例は少ないと思われますので、今回は、私の事務所にご相談に来られ、実際に遺言をされた方の一事例を書き記したいと思います。
その方は、ご主人に先立たれたご婦人で、そのご婦人には、ご長男とご長女がいました。
ご主人が亡くなれた時に過去の色々な経緯もあり(この当たりは詳しく書き記しませんが、)、ご兄弟で遺産分割で揉めて、ご婦人はどちらにも付くことができず、とうとう、ご長女が家裁に調停を申し立てられ、一定の結論が付くまで、大変なご苦労をされました。
また、その結果、家族の人間関係も壊れてしまい、ご婦人は、将来に一抹の不安を持っていました。
結論を申し上げると、ご相談の結果、そのご婦人は、自筆証書遺言を選択されました。
ご婦人のご希望は、子供さんが将来揉めないこと、万一揉めたとしても、
家裁等に申立てをして、これ以上人間関係を壊さないこと、でした。
ご相談を積み重ねながら、ご希望を叶える遺言を作成することができたことを確信され、「これでやっと、自分の幸せを考えることができる。」と涙され、改めて、ご婦人の今までのご苦労が垣間見れました。
二度と紛争を起こさないために、成り行きに任さず、積極的に自分自身が関与する紛争防止を目的とした遺言でした。
今回は、いわゆる「将来の紛争防止」のための遺言の一事例でした。
皆様に、遺言する人の実際を見てもらうため、今後もその時々に、遺言をする人(その2)(その3以下)を書き記したいと思います。
今回は、住宅ローンの借換えの話です。
ご自宅を住宅ローンで取得された方も、賃借されている方も、その
月額支払額は、家計費で言うと、「住宅費」にあたると考えられます。
以前、久米宏氏の番組だっと思いますが、住居は、持ち家が得かか?、それとも、賃貸が得か?という検証番組を放映していたことがありました。
持ち家の方には、「住宅ローンの借換え」をしませんか?
と銀行からチラシが入ったり、銀行担当者から直接、借換え相談会の勧誘を受けた経験をお持ちの方もいらっしゃるものと思います。
「借換え」とは、ご存知のとおり、より低い金利で借り入れて、金融機関から借り入れしている住宅ローンを返済することで、ご自宅に設定された抵当権を抹消し、同時に、低い金利で借り入れた貸付金について新たに抵当権を設定する、ことを言います。
登記で言えば、既存の抵当権の抹消登記をし、同時に、新たな
抵当権設定登記をすることになります。
一見、「借換え」は、月額返済額を少なくする方法と言えるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れない場合があります。
ローン残高が1000万円以上で、金利の差額が1%以上ある
ときは、「借換え」の効果があるといわれています。
ただ、これもあくまで目安であって答えではありません。
ただ、考慮しなければならないのは、手数料(保証料・登記費用等)がかかるので、この手数料も借入額にプラスして、金利計算
をする必要があります。(借入金利が低くても、手数料も含めて
金利計算をすると、現在の金利とそれほど変わっていないことも
ありえます。)
各金融機関により、借換えキャンペーン等もあり固定金利にかなりの差がありますので、各金融機関の金利の比較をお勧めします。
また、既存の住宅ローンの固定金利特約期間(3年固定・5年固定
など固定金利が適用される期間)と新たな住宅ローンの期間満了時のローン残高の比較も重要になります。
これに引き換え、変動金利の方は短期プライムレートの上昇時(変動金利は、原則、短期プライムレートと連動していますので、)に固定金利を選択して金利上昇のリスクを回避する必要があります。
最後に、住宅ローンを組む時に、変動金利が有利か、固定金利が有利かと言う問題がありますが(現状は、企業に対する貸出金利が上昇する傾向にありませんので、変動金利が有利に見えますが、今後はわかりません)、これについては、社会情勢によって、金利が変動するので、自己責任で選択する以外にないと思います。
いずれにしても、「借換え」によって、月額返済額が少なくなったら、減少した部分を貯めて、その貯金で元本一部返済されるのが、1番効果的に住宅ローン残高が減少させる方法ですので、ぜひ、実行してみてください。(ただ、元本一部返済は手数料を伴いますので、少額の一部返済は不利になります。この点をご注意下さい。)
今回のお話が皆様の一助となれば、幸いです。
奥様の疑問は、新たに現れた二人と担当書記官のやり取りを聞いていた時に晴れました。
その二人は、今日の検認手続きに出欠を家裁に告げずに出席したのでした。(家裁に対する出欠の返事は、検認手続きの参加要件ではないのです。)
そのうちに検認手続きの時間が来て、担当書記官が奥様を含めた5人に、「それでは検認場所にご案内します。」と告げ、先頭を歩き始めました。
5人は、担当書記官の後に続き、000号室に入りました。
その部屋は、縦長で8畳ほどの大きさで、机と椅子のみのある部屋でした。担当書記官は、5人を残し「審判官が来られるまで、ここでお待ち下さい。」と告げて部屋から出て行きました。
その後、審判官が来室して、すぐに検認手続きは始まりました。
審判官は、遺言書の保管者である奥様に保管した時期、その状況等を確認して、「それでは、開封いたします。」と告げて、ハサミで封を切り(なぜか、封の一部を残し完全には切断しませんでした。)、遺言書を取り出しました。その後、審判官は、相続人全員に、日付があること、署名と捺印があることをなどを告げならが、読み聞かせました。
遺言書の内容は、果たして、自宅とすべての財産を奥様に譲る。とういものでした。(奥様はほっとされたそうです。)
その後、審判官から相続人全員に「この遺言書の筆跡は、遺言者のものですか?」との質問がなされましたが、奥様のみ「そうです。」と答えました。(他の4名はご主人を良く知らないわけですから、沈黙するもの無理ありません。)
その後、審判官は検認手続きの終了を告げ退席しました。
奥様は、意を決して4人に声をかけたところ、先に来た2名の女性がご主人の姉(二女)の子供で、後で来た男女がご主人の兄(長男)の子供であることが分かりました。
この4名はそれぞれ、何も接触のない我々に遺産を分ける遺言があるはずがないと思ったが、家裁から呼出状が届いたので来てみた、といった趣旨を奥様に告げて、「それでは、せっかく遠方から来たので、大阪見物でもして郷里に帰ります。」と言い、その場を離れました。
奥様は、緊張が解け、全身の力が抜けたようになりましたが、担当書記官に促されて、やっと席を立ち、ご主人の人となりを思い出しながら、検認済みの遺言書を携え、家裁を後にしました。
さて、賢明なみなさまは、なぜ専門家が、自筆証書遺言より公正証書遺言を推奨するのかお分かりになったと思います。
検認手続きは、相続人全員が顔をあわせることもあり、遺言内容によっては、相続人間に争いの種を植え付ける場面でもあるということです。(後日談ですが、今回の遺言内容を実現するためには、遺言執行者を指定すべきでしたが、この指定がありませんでしたので、改めて遺言執行者の選任審判を求めました。)
当事務所では、このような趣旨から依頼者の方々には、できるだけ、公正証書遺言を作成するようアドバイスしています。
今回は、ある事例に基づき、検認の実際をお伝えしたいと思います。
その方は、奥様と事実婚(いわゆる内縁関係)のまま幸せに暮らしておられました。その方は、病弱な自分に何かあったら奥様には相続権ないことをご存知でしたので、心配になられて、自筆証書遺言を書いて、奥様に預けられたそうです。
遺言書を作成して、6年後、ご主人は亡くなりました。
奥様は、ご主人が亡くなって2ヵ月後、家庭裁判所に検認手続きを申し立てました。
約1週間経って、保管者である奥様と相続人全員に「〇〇さんの検認手続きがあるので、何月何日何時に家庭裁判所に出頭して下さい。相続人の方は、出席されるか欠席されるかを回答して下さい。」という内容の呼出状が届きました。
ご主人の相続人は、ご兄弟甥姪であわせて10名いました。
ご兄弟は、お二人が事実婚であることを知っていて、お二人のことを好ましく善意に捉えていて、「今回の遺言の内容は良く分かっているから、検認手続きには行きません。」と奥様に連絡を入れてくれましたが、ご兄弟の中のご長男と次女は、早くに亡くなられたので、亡くなったご主人とそのご家族とは疎遠になっていましたし、その他のご兄弟も同じ状況でした。まして、奥様にとっては、まったく顔も見たことのない人達です。
その日、奥様は、家庭裁判所に30分前に到着し、窓口で検認係の場所を聞き、緊張の中、検認係のドアを開けました。
名前を告げると、すぐに担当書記官が応対しました。
「本日の検認は、事前に出席の連絡のあった方が2名います。時間が来たらお呼びします。」と告げ、奥に引っ込んでしまいました。
仕方なく、奥様は、検認係の前の長いすに腰掛けました。
すると、目の前のエレベータの扉が開き、2名の女性が降りてきました。30代半ばでしょうか、緊張の面持ちで、同じく隣の長いすに腰掛けました。
それから、互いに、目も合わさない沈黙の息苦しい時間が過ぎていきました。
10分ほど経ったとき(奥様には1時間ほど経ったように感じたそうです)、また、エレベーターが開き2名の男女が降りてきました。(あれ、おかしい。今日来るのは2名ではなかったのか?)
奥様は、緊張と疑問で頭が真っ白になられたそうです。
以下、後編に続く。
このブログを楽しみにしている方には申しわけありませんでした。
今後はできるだけ、皆様が飽きないスパンで日々の事柄を書いて行こうと思っております。
ブログを書いていない間に東日本大震災が発生しました。
早1ヶ月が経過しようとしています。
16年前の阪神大震災の時には、直後に伊丹市役所に「被災者のための無料法律相談会」が設けられ、相談担当者として幾度となく赴きました。
その後、豊中も被災された方が多くいらっしゃったので、今は無き「豊中法務局」で約1年間ほどだっと思いますが、無料法律相談会が設けられ、私も含め豊中の司法書士・土地家屋調査士を中心として、さまざまな相談を受託しました。(ちなみに、私の事務所も被災に会い、豊中では珍しく全壊扱いとなって、急遽引越ししなければならなくなり、なんとか近くでマンションの一室を借りることができましたが、仮事務所で不安な6ヶ月を過ごしました。)
被災を受けられた皆様には、謹んでお見舞い申し上げます。
不安な日々をお過ごしとは存じますが、健康に留意され日々の生活を取り戻されることをお祈り申し上げます。
東日本で被災されたご親戚、ご友人などがいらっしゃる方におかれましては、ご心配の法律問題があれば、微力ではありますが、できる限りお答えしたいと思っておりますので、ホームページの「お問い合わせフォーム」をお使いいただければ幸いです。
ただ、タイトルほど堅い話でなく、「つぶやき」のようなものですので、気軽に読んでいただければと思います。
唐突ですが、「なんのために法律があるか?」というと、過去、強者保護に傾倒したものが多く存在していたものが、民主化に伴い、また、強者保護を是正するため、近代になって弱者保護を役割とするものが多く出現することとなりました。労働基準法、雇用均等法、借地借家法などを思い浮かべて頂くと、お分かり頂けるものと思います。
今現在の傾向はどうかというと、弱者保護を目的とするものから「選択の自由」を実現するための法律が、多く施行されることとなりました。
キーワードは、「選択の自由(選択権の確保)」です。
たとえば、平成11年以前の高齢者介護に関する制度は、医療と福祉が縦割りの制度となっており、サービスが自由に選択できないものであったものが、平成12年4月施行の介護保険法により、要介護認定に基づき事業施設の選択やケアプランによりきめ細かい介護計画を選択できるようになりました。また、同じく、同時期に成年後見制度が導入され、現在及び将来における自分自身のライププランを実現できる方法を選択することができるようになりました。
以後、平成18年5月施行の会社法も同じく、会社の形及び機関等を原則自由に選択することができるようになり、さまざまな形態をもった会社が存在することになりました。
これらの法律の施行により、より良くご自分の人生を自分らしく営むことが選択できるようになってきております。ご自分のことを良く理解している専門家に恵まれ、二人三脚でご自分らしい選択をされることをお祈りします。
相続人が増える主な理由は、ふたつあります。
ひとつは、兄弟姉妹が相続人となる場合です。お子さんがいないご夫婦で、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となるため、遺産分割が整い難くなり、そのまま放置した場合を想像すれば、よくお分かりになると思います。
二つ目は、「数次相続」です。「数次相続」とは、年代順に亡くなって行く場合(普通はそうですよね)で、遺産分割協議を放置している間に亡くなった方の子供さんが亡くなってしまった場合の相続を言います。この場合は、子供さんの配偶者が数次相続人となるので、より以上に遺産分割の協議が整い難くなる場合があり、そのため、相続人が増えることになります。
もし、この二つの要素が複合すると、どうなるかと言うと、
私が今まで経験した相続登記手続きの中に、相続人の数が123名となったものがありました。
現在受託している相続手続きの中で、11月末から約2ヶ月経って、やっと、戸籍謄本等を取寄せ完了したものがあり、相続人の人数は35名となりました。結果、戸籍謄本・住民票の数は100通を超えました。
この案件もこの複合ケースで、昭和62年になくなったにもかかわらず、20数年経った今も、遺産分割が整わないままに、現在に至りました。
さあ、今からが大変ですが、時間を費やしても、ご依頼者と二人三脚で最後まで、遺産分割の協議を整えるため努力したい、と密かな闘志を燃やしております。
昨年の年末、みなさまのためになる情報を発信するため、ホームページをリニューアルしました。
私のわがままを全面的にご支持いただきホームページを作成して頂いた、TAさん、Nさん、TDさん、カメラマンさん本当にありがとうございました。
おかげ様で、新年早々、さまざまな方からお問い合わせとご相談のご予約を頂いております。
今、私にできることは、初心を忘れず、誠実に、丁寧に、継続して、ひとつづつお問い合わせにお答えすることと思っております。
今年になって、専門家のポータルサイトなどから全国の方々の質問に対して回答してほしい、などの依頼が来ておりますが、前述のとおり、私としては、地域の司法書士として、みなさまのためになる情報を発信し、ご相談を承ることを優先したいと考えております。
みなさま、本年も宜しくお願いいたします。
⇒ ロレックス gmt (10/18)