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遺言書の検認手続きの実際(後編)
 前編は、検認手続き前まででしたが、後編は、検認手続きとその後を記述したいと思います。

 奥様の疑問は、新たに現れた二人と担当書記官のやり取りを聞いていた時に晴れました。
 その二人は、今日の検認手続きに出欠を家裁に告げずに出席したのでした。(家裁に対する出欠の返事は、検認手続きの参加要件ではないのです。)
 そのうちに検認手続きの時間が来て、担当書記官が奥様を含めた5人に、「それでは検認場所にご案内します。」と告げ、先頭を歩き始めました。
 5人は、担当書記官の後に続き、000号室に入りました。
 その部屋は、縦長で8畳ほどの大きさで、机と椅子のみのある部屋でした。担当書記官は、5人を残し「審判官が来られるまで、ここでお待ち下さい。」と告げて部屋から出て行きました。
その後、審判官が来室して、すぐに検認手続きは始まりました。
 審判官は、遺言書の保管者である奥様に保管した時期、その状況等を確認して、「それでは、開封いたします。」と告げて、ハサミで封を切り(なぜか、封の一部を残し完全には切断しませんでした。)、遺言書を取り出しました。その後、審判官は、相続人全員に、日付があること、署名と捺印があることをなどを告げならが、読み聞かせました。
 遺言書の内容は、果たして、自宅とすべての財産を奥様に譲る。とういものでした。(奥様はほっとされたそうです。)
その後、審判官から相続人全員に「この遺言書の筆跡は、遺言者のものですか?」との質問がなされましたが、奥様のみ「そうです。」と答えました。(他の4名はご主人を良く知らないわけですから、沈黙するもの無理ありません。)
 その後、審判官は検認手続きの終了を告げ退席しました。
 奥様は、意を決して4人に声をかけたところ、先に来た2名の女性がご主人の姉(二女)の子供で、後で来た男女がご主人の兄(長男)の子供であることが分かりました。
 この4名はそれぞれ、何も接触のない我々に遺産を分ける遺言があるはずがないと思ったが、家裁から呼出状が届いたので来てみた、といった趣旨を奥様に告げて、「それでは、せっかく遠方から来たので、大阪見物でもして郷里に帰ります。」と言い、その場を離れました。
 
奥様は、緊張が解け、全身の力が抜けたようになりましたが、担当書記官に促されて、やっと席を立ち、ご主人の人となりを思い出しながら、検認済みの遺言書を携え、家裁を後にしました。

 さて、賢明なみなさまは、なぜ専門家が、自筆証書遺言より公正証書遺言を推奨するのかお分かりになったと思います。
 検認手続きは、相続人全員が顔をあわせることもあり、遺言内容によっては、相続人間に争いの種を植え付ける場面でもあるということです。(後日談ですが、今回の遺言内容を実現するためには、遺言執行者を指定すべきでしたが、この指定がありませんでしたので、改めて遺言執行者の選任審判を求めました。)

当事務所では、このような趣旨から依頼者の方々には、できるだけ、公正証書遺言を作成するようアドバイスしています。
| aoki-shiho | 18:09 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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